第2回 K'S WORKSHOPリポート――プロジェクトのコミュニケーション

[K'S WORKSHOP 2006 - 現場人に学ぶ秘密のコミュニケーションスキル] 第2回
ゲスト:東洋エンジニアリング 井上明彦氏

 2006年8月25日
 TEPIAプラザ(外苑前)
 司会:菊地史彦(ケイズワーク)

去る8月25日、今年2回目となるK'S WORKSHOP 2006が、東京・外苑前のTEPIAプラザで開催されました。ゲストには東洋エンジニアリングの井上明彦氏をお迎えし、プロジェクトマネジメントのコアスキルやコミュニケーションについて、興味深いお話を聞かせていただきました。

井上氏&菊地「なにげなく使っている『プロジェクト』という言葉ですが、我々はその意味を本当に知っているのか、プロジェクトとは一体何なのか、プロジェクトをマネージするって何だろう、そんな疑問が今回のワークショップの発端となっています。そこでお招きしたのが、東洋エンジニアリング(TEC)のプロジェクトマネジメントスペシャリスト(PMS)である井上明彦さんです。井上さん、そもそもプロジェクトとはどういった事柄を指すものなんでしょうか?」(菊地)

数多くのプラント建設プロジェクトを展開するTECに入社した井上さんは、1989年から国内外での6つのプロジェクトに携わった後、1999年より経営企画部門へと移り、現在はプロジェクトマネジメント(PM)を適用して、社内業務改革や新規事業開発に取り組まれています。

井上氏&菊地 「TECでは、明確な始点と終点があり、また限られた資源(リソース)できっちりと成果を出すものをプロジェクトと定義しています。なんとなく始まってなんとなく終わる仕事とか、頑張ったけど成果がはっきりしない仕事などはプロジェクトではありません。お客様がなぜこのプロジェクトをやろうとしているかを理解せず、『仕様書に書いてあった通りに進めました』というやり方ではもう通用しないのです。目的をお客様としっかり共有し、役割を分担し、その中で自分の目標、お客様の目標という捉え方をしないとプロジェクトは成功しません」

プロジェクトマネジメントの概要を紹介したあとは、「新しい家を購入する」という身近なプロジェクトを想定。これをWBS(Work Breakdown Structure)などの手法で分析しながらレクチャーは進行しました。

WBSを解説

「プロジェクトマネジメントで最も重要なのは計画です。計画を立てる上で、その計画構成要素を抜き出し、細分化し整理するツールがWBSです。WBSは小さなプロジェクトで500〜1000個くらい、海外での5年程度のプロジェクトとなると、その数は3倍以上になります」

計画段階で徹底的にWBSを作りこむことで、実行時の"作業の抜け"を極力減らし、スコープと呼ばれるプロジェクトの範囲定義をしっかり行うことが重要であると井上さんは指摘します。

続いて進捗管理の方法に触れ、WBSで細分化された作業に対して、終業割合や予算比率などの数値を与え、予定と実際の進捗の差を比較するという手法を紹介。プロジェクトに関わる人すべてが、お金の使われ方とスケジュールを共有することによって、円滑なコミュニケーションを進められると強調しておられました。

またリスク管理については、「避けることに徹する」と井上さんは明言します。「究極を言えば、火災のリスクを避けたいならいつ家が燃えてもいいようにしておく。泥棒に侵入されるリスクを避けるのなら家から出ない(笑)。これをプロジェクトに置き換えると、検討の結果、避けられない深刻なリスクが見つかったら、そのプロジェクトは受注しない、という選択肢もあり得ます」

質疑応答の時間には、プロジェクトマネジメントにおけるコミュニケーションというテーマで、会場のお客様を交えてディスカッションが行われました。井上さんは「お客様と対話する時には、表面的な情報の交換だけで済むと思ったら大間違い。常に相手の立場に想像を及ぼし、変化の兆しをとらえることが重要です」と語っていました。どれほど周到に計画されたプロジェクトでも環境の変化の中で刻々とその姿を変えていきます。それを常にウォッチし、必要な手を打ち続けるところにプロジェクトマネジメントの「肝」があるようです。

質疑応答

『プロジェクトマネジメント 成功するための仕事術』TECの知識と経験をまとめた『プロジェクトマネジメント 成功するための仕事術』という書籍で、井上さんはこう書いています。「ドミノ倒しで無数の牌を黙々と準備できるのは、それが思い描いた通りに一分の隙もなく正確に倒れていく、計画通りに進む美しさに魅せられているからではないかと思います。周到な計画には、未来の時を支配する力があるのです。」 作業を細分化し、進捗を管理し、リスクに備え、すべての情報をプロジェクトに関わる全員と共有しながら、ゴールへ向かう道を創造し、進んでいく。サイエンス(論理)とアート(経験・勘)をともに駆使するプロジェクトマネジメントの醍醐味は、自らの手で未来を支配することなのかもしれません。

こうして2回目となるワークショップも好評のうちに無事終了いたしました。ゲストの井上さん、当日会場に足を運んでいただいた大勢の皆様、ありがとうございました。

井上氏&菊地
ワークショップ風景


※WBS(Work Breakdown Structure)とは
プロジェクト全体のスコープ(範囲)をプロダクト指向で分割したツリー構造体。プロジェクトの目的を達成するために実行されるべきすべての作業を体系化し、定義し、表示したもの。


(第3回は11月を予定しています。本HPでもお知らせいたします)