文章は「型」で書くといい

[2011年12月15日]

私たちは、この2011年という年を一生忘れることはないでしょう。残り少なくなりましたが、無事に年が暮れることを祈るばかりです。
初秋から何度かお伝えしてきた、「ビジネスライティング」のパイロットプログラム<ライティングコアスキル>が先週無事に終了しました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。また公開研修と並行して、ある企業の方々に同様の個別研修をご提供しました。こちらの方々もおつかれさまでした。結果的に、かなり幅広い層の方々に学んでいただくことになり、プログラムの適応性を確かめることができました。

と、ほっとしているところへ、友人からこんな質問がきました。
「文章を書く仕事をたくさんしているけど、いまだにそのたびに辛い。できれば書きたくない。この正直しんどい仕事が少しでもラクになる方法を教えてくれるの?」
文章を書くのは辛い...その通りですね。ライティングという行為は、おそらく人間の本性(自然)に反するものゆえにしんどいのです。三度のご飯より書くのが好きという例外的少数者は存在しますが、この私を含め、「書かなくちゃ」の気分は暗雲のように低く垂れ込めて、精神状態を悪くします。さらに「書けない」辛さはまさに筆舌に尽くしがたい。
なにか妙手はないか、すがりつく藁はないかと辺りを見回し、ネットで手当たり次第に検索を始める頃には、焦慮というもっとたちの悪い奴が迫ってくる...

私が友人に言ったのは、おおよそ次のようなことでした。
「独創性に溢れた文章をラクに書く方法は存在しないけど、ふつうの文章をそんなに苦労せずに書く方法はあるんだよ」
「どんなふうにするの?」
「シンプルに言えば、得意な『型』を一つか二つ、欲を言えば三つ持てばなんとかなる」
「『型』って、なに?」
「筋書きの『型』。発想と論点の組合せで、つごう9通りあるけれど、この中から使いやすいものを見つければいいんだ。慣れれば、ひとつの型でたいていのテーマはいける」
「いつも、同じような文章にならないかしら?」
「大丈夫。テーマが違えば文章は変化するし、『型』が似ていると言って文句をつけてくる人はほとんどいないからね」
「ふーん...」

友人は半分ぐらい納得したようでしたが、懐疑の気配がもう半分に漂っています。もっともなハナシで、「型」というとふつうは、金型・鋳型などの形状や武道・舞踊などの様式を想像するからです。文章の「型」はどちらともちがっていて、人間の認識や理解を誘導するための仕組み(流れと構造)です。本当のことを言うと、一般的な文章の「成功」と「残念」はほとんど「型」に依存しています。読み手がなるほどと得心するのは、内容(コンテンツ)のように見えて、実は内容を乗せている「型」なのです。
昔話には、わかりやすい「型」があります。「舌切り雀」と「おむすびころりん」と「笠地蔵」はとてもよく似ています。恩返しとか善行が報われる(欲張り者がひどい目に遭うという枝葉もあります)という「型」が荒唐無稽な内容をしっかり支えているのです。

もともとの問題意識は、「どうすれば論理的で説得力のある日本語を書けるか」というものでした。大それたテーマです。世のロジカルシンキング派の教えは、「論理的イコール説得的」というものですが、私はどうも腑に落ちないので、少し別の考え方を探ってみたかったのです。ロジカルシンキングのように、解決命題を提示し、論証していけば、説得力が生まれる場合はある。特に知識体系や思考方法が共有され、定型のフレームワークで話がどんどん通るような「場」では効率がいい。
しかし、そういう「モノ分かり」のいい相手でない場合はどうでしょう。論証すべき命題の提示にたどりつくまでに、多少の手続きが必要なのではありませんか。「結論を先に言え!」は、90年代以来、うるさく言われてきたコミュニケーションマナーですが、私の経験で言えば、むしろ結論(解決命題)にたどりつくまでが勝負です。

日本人の文章は(文法の特徴によって)結論が後に来ることが多い。コミュニケーション作法でも、結論を先出しすることを避ける傾向がある。これは欧米派(ロジカルシンキング派)にはきわめて評判が悪いものですが、実は合意形成を重んじる我々日本人には重要なコミュニケーションスキルです。だから、文章を書く時も、いかに相手(読者)の合意を取りつけるか、いかにコンセンサスポイントへにじり寄るか、が大切なライティングスキルになるのです。
「型」は、この合意へのアクセスの道筋なのです。<ライティングコアスキル>では、主題の絞り込みや論点の形成などの筋書きづくりについて、オリジナル・メソッドをご提供しました。複雑なものではありませんが、慣れれば、アタマと手を動かすための確実な手掛かりになります。私の友人ぐらいの実力なら、確実に「ラクになる方法」です。

「どう、やってみる?」と聞くと、こんな答えが返ってきました。
「面白そうだけど、私にできるかなあ」
大丈夫、できます。書きたくて書きたくて仕方がなくなる――とは言わないけれど。

■お知らせ
<ライティングコアスキル>の公開研修は、来春、第二回目を開講する予定です。
また企業内研修については、ご要望があればカスタマイズも承っています。お気軽にお問い合わせください。

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★この文章は、ケイズワークのニューズレター「K'S LETTER」に掲載されたものです。
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