[K'S WORKSHOP 2006 ― 現場人に学ぶ秘密のコミュニケーションスキル] 第1回
ゲスト:コミュニケーションアーティスト 谷澤邦彦氏
2006年5月19日
カフェ・gabowl(ガボウル、外苑前)
司会:菊地史彦(ケイズワーク)
◆ビジネスに必要な対話とマネージの力をビジネスとは異なる分野に学んでいこうというK'S WORKSHOP 2006の第1回が、5月19日、コミュニケーション・アーティストの谷澤邦彦氏を迎え、東京・外苑前で開催されました。30人近いお客様をまえに、アートの力を人と組織のコミュニケーションに生かす多様で印象深い試みが紹介されました。
「第1回のケイズワークショップによくおいでくださいました。このWSでは、さまざまなコミュニケーションの現場におられる達人にそのワザの奥までお聞きしようというものです。今回のゲストは“コミュニケーションアート”に取り組まれている谷澤邦彦さんです。谷澤さんのコミュニケーションへのアプローチとは、どんなものなのでしょうか」。
もともとファッションの勉強をされていた谷澤さんは、1994年ごろから絵画制作をはじめ、2000年ごろからアートがコミュニケーションのツールとなることに注目し、「Soul Communication Art」と題した、心の関係性の生まれるアートをさまざまなプロジェクトを通して進めてきました。
「EARTHの字の中にはartがありますね。つまり地球の真ん中にはartがある。それがEnvironmentやEducationなどの“E”のつく言葉と、“H”で始まるHeartをはじめ、Happy、Harmonyなどのココロを示す言葉をつなげていることに気がついたのです」
アートは人間の所為とココロをつなげるものと考える谷澤さんは、さらにアートの中心には娯楽性があるのではないかといいます。谷澤さんはその思いをさまざまなアートプロジェクトを通して実践してきました。無機質な病院や老人施設のイメージを色とりどりの壁画で変える試みや、明るい色を多用し、ガウディのような有機的なデザインで憩わせる空間ディスプレーなどがあり、ほかにも舞台美術、インテリア、ショップデザインなど多方面に成果を残しています。

「Heart Letter」というプロジェクトでは、子どもたちに自分のココロを描かせています。もちろん、最初子どもたちはなにを描いたらいいか分かりませんが、「お父さんは何色のイメージ?」とか、「おなか一杯のときは何色だろうか」と色を連想させ、12の色紙から自分のココロの色にあったものを選ばせて自由に描かせると、すばらしい抽象画ができてくるそうです。さらに、できあがったもので鑑賞ワークとしてみんなで見ることで、自分のココロと他人のココロを比べてお互いを想像するコミュニケーションが生まれてくるといいます。

これらのコミュニケーションアートの中で、谷澤さんの活動の大きな部分を占めてきたプロジェクトが「Heart Gift」です。これは絵を依頼される方に「カルテ」と呼ぶチャートに記入してもらい、そのコトバにインスピレーションを得て、谷澤さんが絵を描き上げるというプロジェクトです。アートは一人で完結するものではなく、必ずコミュニケーションがあって実現するという谷澤さんの考えが反映したプロジェクトですが、開始以来、大きな反響を得て、すでに400人以上もの方が参加されているそうです。実は、この日にケイズワークの菊地もその「Heart Gift」をいただくことになり、会場で初めて絵と対面しました。
「いや…(絶句)、考えていた以上に心を動かされます…。司会を忘れてずっと朝まで見ていたいような(笑)。ありがとうございました」(菊地)
「Heart Gift」は、企業のビジョンを対象とする制作にも広がっています。それが谷澤さんとマネジメントを行う㈱ホワイトシップの長谷部貴美さんが進めている「Vision Art」です。この日は、創立100周年を記念して企業理念を形成するために絵画を制作した事例や、大手電機メーカーが社内でイノベーションを進めるビジョンを共有するための絵を制作し、それをワークショップでメンバーが共有していく事例などが紹介されました。企業体という組織の中でも、アートがコミュニケーションを促進する大きな力となっていることが強く印象付けられました。
<後半には谷澤さんと共同でプロジェクトを進めている㈱ホワイトシップ代表の長谷部さんが登壇。ホワイトシップという社名には、日本に入ってきた黒船に対抗して、アートで日本から世界へ出て行く「白船」の意志を込めているそうです。>
アートの伝える力とつなぐ力を2時間にわたり語り合ったワークショップはこうして終了しました。コミュニケーションの多様な様態と可能性をさぐる本ワークショップにとって、第2回以降への大きな弾みとなったようです。谷澤さん、長谷部さん、そして来場されたみなさん、ありがとうございました。
(第2回は8月を予定しています。本HPにてお知らせいたします)

<会場はNYのロフトを想像させるカフェ・gabowl。壁も床もカウンターも手づくりで温かみがあり、気持ちをゆったりさせる空間です。オーナーは美大建築科出身の鈴木氏です。>
