トップメッセージ

戦略を運動へ、運動を戦略へ――ビジョン・対話・プロセス

目下の危機の向こう側にどんな世界が待ち受けているのか、我々はその姿を明確に描ききれていません。20世紀的な経済・社会が終わりを告げつつあるのは確かですが、今まで触れたことのない、21世紀の新しい世界について、我々はまだ多くのことを知らされていないのです。

激変する環境に応じて、短期的な戦略の修正が否応なく求められています。その結果、長期の戦略と目下の個別施策が切れてしまい、断片的な打ち手の集積が経営の一貫性をないがしろにする危険性があります。ゆえに、今、求められているのは、迅速な変化対応だけでなく、戦略の彼方に未来のあるべき姿を見据えるビジョン、ビジョンに基く揺るぎない行動原理の再構築です。
「腹を括る」とは、ビジョンを腹に落とし、行動原理でその腹を括るということかもしれません。

もうひとつ重要なのは組織風土への配慮です。喧伝される様々な組織症候群は、氷山の一角であり、組織不活性現象はいまや大半の職場を覆っています。現象の根底にある社員と企業の信頼関係の崩壊を食い止めない限り、危機を乗り越えることは困難です。

この問題についてもビジョンの構築と浸透は必要条件ですが、十全ではありません。

組織風土改革は、経営と現場の率直な意見交換や社員同士のオープンな討議などの「対話」から始まると私は考えています。対話によって、社員は参加の実感を持ち、自立へのきっかけを獲得し、組織へのコミットメントを自覚することができるからです。

ビジョンは対話を導く道標です。対話はビジョンを信頼に変える契機です。

企業の賢さは戦略として表出されますが、企業の強さは組織行動の中に出現します。戦略はマネジャーや現場の社員に理解され、彼らの具体的な行動へ転化して開花します。戦略を社員の判断・行動・表現へ具体化し、成果へ結びつける実装(インプリメンテーション)のプロセスこそ、企業の強さを支えています。もちろん、このプロセスが稼動する前提は、ビジョンと対話にほかなりません。

ケイズワークは、戦略をデザインするコンサルタントではありません。私たちは、ビジョンや戦略が実際の運動へ転化するまでのプロセスをデザインし、そのプロセスに必要な対話を、ファシリテーションやコミュニケーションの企画と実行によってサポートするチームです。
私たちは、危機と取り組むトップとともに、ビジョンと戦略を現場の創造力へ変え、経営と現場が一緒に未来を語り合える組織をつくりたいと願っています。

株式会社ケイズワーク 代表取締役 菊地 史彦 (きくち・ふみひこ)

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Profile

1952年、東京都に生まれる。
慶応義塾大学卒業。筑摩書房で編集業務に就き、90年の退社まで約60冊を刊行。91年から編集工学研究所(松岡正剛所長)で、次世代メディア/コミュニケーション技術の研究、地方自治体の産業・文化振興、郵政省・通産省の委託で情報通信・コンテンツに関する研究などを担当。
1999年、ケイズワークを設立し、代表取締役に就任。企業コミュニケーション、ブランディング、ナレッジマネジメントを主要分野にコンサルティングやメディア制作業務などを行ってきた。2003年に企業変革を促進するインナーコミュニケーションのコンセプト”Change Communication”を提唱し、翌年から当社メールマガジン K’s Letterに「コーポレートビジョンを訪ね歩いて」や「コミュニケーション思想の先駆者たち」を連載。なお、2000年には株式会社ビジネスカフェジャパン、2006年には株式会社ラジオカフェ設立に参加。国際大学GLOCOM客員研究員。

著書:『「若者」の時代』(トランスビュー 2015年)、 『「幸せ」の戦後史』(トランスビュー 2013年)
共著:『情報文化の学校』(NTT出版 1998年)
論考:「企業変革のためのコミュニケーション」 (『Change Communication Book』Vol.1)、 「会社を変えるインナーコミュニケーション」(JASDAQメールマガジン) 、「インナーブランディングこそ競争力の源泉」(『宣伝会議』04年6月号)、「強いチームは内側から好循環を創り出す」(『PRIR』06年2月号)、「コンテンツからコンテクストへ」(『Espresso』No.9)、「組織と顧客」(『Espresso』No.11) などがある。